『こころの元気+』 2015年1月号(95号)「おこまりですか?では他の人に聞いてみましょう!」から(掲載時の情報であることにご注意ください)
○「こころの元気+」の申込について ○申込はこちら
Q 防災用の薬の備えについて
私は静岡県に住む40代女性です。
静岡県は「東海地震がいつ起こっても仕方がない」と言われ続けて30年以上経つ地域です。
さらに現在は東南海地震の発生も心配されています。
私は毎日の薬が必要です。
生活習慣病のある人は「1か月分くらいは余分にもらっておいて、いざというときに備えるようにする」と聞いたこともあります。
でも私の場合、症状が落ち着かないため、毎週通院していますが、そのつどと言ってもいいくらい薬が変わります。
こういう場合になると余分に処方していただくのは無理な話で、薬のストックというのは不可能な話です。
「万が一大地震が発生し、交通網がマヒしてしまった場合、薬はどのように手に入れたらいいのだろうか?」
「避難所暮らしになった場合、夜は眠れるだろうか?」
など悩みは尽きません。
地震に限らず、津波や土砂災害などのことを思うと、備えていても、備えごと流されてしまうこともありえます。
皆さまは、防災に関する薬の備えはどのようにされているのでしょうか?
A 主治医に相談しては?
/るいさん(埼玉県)
災害が多い昨今、手元にお薬がないのはたいへん不安ですよね。
私はお薬を1か月分処方していただいて、3週間くらいで受診することが多いです。
そうしていつも少し手元にお薬を置いている状況です。
1週間に1度の受診で薬も変わるとのこと、まずは主治医の先生に、「地震や津波などで薬がなくなることが不安である」と率直にお伝えし、2週間分くらいいただけないか相談してみてはいかがでしょうか。
受診は1週間ごとに行くことにして、薬だけ多めにいただけないかと訴えてみるのです。
案外すんなりくださるかもしれません。
私はこのように先生に訴え、多めにいただいています。
また、着替えやラジオなどを入れた「緊急避難袋」はつくっていらっしゃいますか。
うちでは玄関に置いてあります。
その中にお薬手帳の古いものを入れておき、使っている薬がわかるように備えております。
参考になれば幸いです。
A 頭の文字で記憶
/こだぬきさん(群馬県)
統合失調症の40代女性です。
かなり前ですが、作業所に行っていたときに、所長が当時起きて間もなかった阪神大震災の例をあげて、自分の服用している薬の名前を暗記していることの大切さを話されました。
地震でカルテもめちゃくちゃになり、救援が入って薬が手に入るようになっても、自分の常用している薬の名前がわからないために薬が服用できない例が続出してしまった…とのこと。
私は当時「セレネース」と「リスパダール」という薬を服用していましたが、いざ覚えようと思い立っても、初めは、たった2つの薬の名前さえなかなか覚えられませんでした。
2つの薬の名前の最初の文字の「セ」と「リ」を野草の「芹」を思い浮かべてまず「セリ」と覚えて、次に、「セ」と「リ」から始まるそれぞれの薬の名前を覚えました。
それ以降、薬が変わるたびに改めて暗記しました。
地震でカルテがめちゃくちゃになったときに備えてですから、服用の㎎についても、それぞれ暗記します。
現在は「お薬手帳」も普及し、私も常に持ち歩いていますが、今でも他科を含めてすべての常用薬の名前と量を暗記しています。
災害時を考えると、持ち歩く薬の現物は数日分で、薬の名前と量を暗記するほうが現実的です。
薬がたびたび変わる方は「お薬手帳」を常に持ち歩くことをお勧めします。
A 紙の情報も保管
/川北誠さん(三重県)
僕の住む三重県も、東海地震、東南海地震ともに深く関係し、備えが求められています。
いざというときの薬の備え、不安なことと思います。
1週間で薬が変わるなら、余分に備えておくことはむずかしそうですね。
お薬手帳があると思うので、それをしっかりと保管しておくといいかもしれません。
すべての科の最近処方された薬が記入されるので、災害時は、それを持って近くの病院に行くと処方されやすいですよね。
避難所等での応急の診療でも対応してくれると思います。
万が一、お薬手帳がないのであれば、薬局で申し出ればすぐに用意してもらえます。
僕は、お薬手帳が何冊にもなったので、現在のものはカバンに入れて持ち歩き、1つ前のものを非常用袋に入れています。
また、薬局で薬の情報を記した紙をもらえると思うので、こちらも活用できると思います。
同じ薬を処方されたときは前の分は破棄して、薬が変わったら残しておくと、直近に処方された薬がわかります。
僕は、ずっと以前に処方された不眠の薬をもう一度出してほしいと思ったときに、この紙を医師に見せて処方してもらいました。
10年前の紙だったので、医師も驚いていました。
薬が安定しないことも、大きな不安要素ですよね。
自分に合う薬に出会えることをお祈りしています。
根気のいる作業だと思います。
また、眠れないことが一番よくないと思うので、不眠対策の薬の名称だけでも覚えておくといいかもしれません。
A 助けを出せる自分になること
/渡邊恵子さん(東京都)
災害時の薬の備えについては私もいつも考えています。
私の場合、1か月に1度の通院で処方されているので手持ちの薬は1か月分あります。
そのうち3日分は常に持ち歩いています。
お薬手帳、ヘルプカードも肌身離さず持ち歩き、その他にも眼鏡、防災グッズ等を常に持ち歩いています。
災害時、主治医から処方箋をもらうことができなくなった場合、お薬手帳があれば、他の医療機関や調剤薬局で薬を受けとれると聞いています。
しかし、質問者様の場合、1週間毎に症状に合わせて薬が変わるということですので不安が大きいと察します。
詳細はわかりませんが、服用している薬が毎回全面的に変わることはないのではないかと思います。
メインの薬は変わらないのではないでしょうか?
ドクターにご自分の不安を相談して、災害時の対応を一緒に考えていただくとよいと思います。
災害時にどのような精神状態になって、どのような薬が必要になるかは、ドクターと質問者様の共同作業で工夫して考えるとよいと思います。
薬や防災グッズの備えも大切ですが、想定外のことが起きたときに一番大事なことは、困ったら自ら「私は今、こういうことで困っています。助けてください」と言える自分になっていること(受援力)だと私は常に考えています。
避難所での生活も、「受援力」があれば乗り切っていけると、東日本大震災の際、避難所生活をした経験上お伝えしたいと思います。
Q 体調を安定させる
/冨永真弘さん(奈良県)
私も、生きているうちに南海トラフ地震が必ず発生するといわれている地域にすむ34歳の男性です。
まず、相談者さんの体調を安定した状態にすることから始めては、どうでしょうか。
そうすると、薬も安定した量をもらえるようになると思います。
診察に行くたびに薬が変わっていては、備蓄もできないと思います。
毎回薬が変わるということは、体調が変化するからということもありますが、あまりに薬が変わりすぎているのは、もしかしたら、主治医が試験的に処方しているのではないかと考えたりもしてしまいます。
体調が安定した状態になると、薬への不安も軽減すると思いますし、ストックしやすくなると思います。
私が通所している作業所では、災害などが起こった際、お薬手帳などがなくなった場合に備えて、スタッフが、薬の種類や医療機関の情報を書いた紙を避難所に持ってきて、災害状況下でも把握できるようにするため、医療機関名や薬の種類、服薬回数などの項目があるエマージェンシーシートを事前に書いています。
それを二部つくって、一冊は本人が管理、もう一冊を作業所のスタッフが管理して万が一の災害などに備えています。
災害状況下で薬を供給してもらうためには、まず薬などの情報を保存していくことが大切だと思います。
A 震災を体験しましたが
/藤枝脩平さん(岩手県)
私は31歳の統合失調症です。
東日本大震災を経験しました。
幸いにも、私は内陸に住んでいたので津波で何もかも流されることはなく、次の診察までの薬を確保できました。
実は、震災の数日後に診察日だったのですが、薬局ではいつもどおりに薬を処方されました。
たしかに、天変地異で薬の処方を受けられなくなったらどうしようと考えると不安になりますよね。
けれども、たぶん病院や薬局ではそういう事態に備えて、薬を備蓄しているかもしれません。
だから案ずることはないと思います。
そういえば、以前『こころの元気+』で、「薬は非常時に備えて3日分の余裕を持ちましょう」という記事を読みました。
これ以降、私は常に3日分の備蓄をするようにしていました。
けど、先生にばれてしまい、今は備蓄がない状態です。
非常時になったら病院・薬局はどのような対応をするのか、一度尋ねてみるのがいいかもしれませんね。
『こころの元気+』 2015年1月号(95号)「おこまりですか?では他の人に聞いてみましょう!」から
(注意:掲載時の情報であることにご注意ください)
▽薬の関連特集は
●2023年2月号「聞けなかった薬の話」(192号)
●2021年12月号「ベンゾ系薬剤とのつきあい方」(178号)
●2019年9月号「薬とのつきあい方が変わってきた」(151号)
●2017年11月号「副作用を減らしたい」(129号)