「こころの元気+」2008年3月号より
ストレスとのじょうずなつきあい方
黒川常次/全国精神障害者団体連合会
ストレスは誰にでもある
ストレスは、心の病になってしまった人も、明るく元気な人にも、ほとんどの人が何かしらの形で接し、感じ、暮らしていることでしょう。
「家族や友人、同僚などとの人間関係」「考え方の違い」「思い通りに自分が動けない」、など生活をしているとストレスは避けられません。ストレスを受けたのに加え、それを解消できずに蓄積して、心の病になった方も多いと思います。
逆に、ストレスがあっても元気でいる健常者の方もたくさんいます。この差は一体、何でしょう? きっと、受けたストレスを何らかの形で発散しているのだと思います。社会人であれば飲みにいったり、愚痴を聞いてくれる親友がいたり、休日にスポーツを楽しんだり、熱中できる趣味があったり…。いろいろな方法で、心をリフレッシュしているのだと思います。
私もストレスを発散させながら生活していた社会人の一人でした。しかし、仕事がどんどん激務になり、規則正しい生活ができなくなり、睡眠障害、偏頭痛、上司や同僚との人間関係の悩みなど、お酒やスポーツだけで解消できなくなりました。
そこには、仕事に対する責任感と、信頼を裏切りたくない気持ちがあり、たいへんな仕事の量でも、こなさなければ…という強い気持ちがありました。しかし、それがあだになり、自律神経失調症、抑うつ症、仮面うつ病…と、元気をなくし、病になりました。
自分を知る方法
では、ストレスに弱い私たちは、どのようにストレスとつきあっていけばよいでしょうか。
私が思うには、「自分」をよく知ってあげることがよいと思います。自分は、どういう時が好きで、どういうことがきらいで、楽しい、つらい、うれしい、など…。「自分」というものが、どういう要素でできているか見つめてみてください。
もし「自分」のことがわからなかったら、紙の真中に「自分」と書き、その余白のところに自分の身の回りにあることを書いてみてください。家族、病院、施設、友人、雑誌、音楽、インターネット…さまざまなものが浮き上がってきます。
今度はそれを好きなものときらいなものに分けます。それを繰り返すうちに「自分」を発見できると思います。もし、そんな自分に苦手なものがあるとして、それを気づいてあげていれば、そのものを避ける暮らし方の工夫で、ストレスがやわらぐこともあるでしょう。なにもストレスと真っ向から向き合わなくてもよいのです。
どうしても向き合わなければいけないときでも、自分にとって一番負担の少ないものを「選択」すれば、生活も改善されることと思います。
工夫してストレスとつきあう
私は、今も苦手なことがたくさんあります。そのなかで、「同じ人」と「長時間過ごす」ことができないということがあります。気をつかいすぎて疲れてしまい、しまいには短気になり、人間関係を壊してしまうのです。
ですので、友人と旅行に行ったりすることは、あまりありません。一人旅の方が好きです。また、家族とも一緒に暮らすと、関係が悪くなるので一人暮らしをしています。これは、自分と相手のために選んだ、一つの私の「工夫」です。
それでも、生活するなかで些細なことが気にかかり「解決されない不安」や、「薬をのんでもなかなか結果が得られない」、心の病ならではのストレスがあります。生活のなかでストレスを完全に避けることはできません。上手につきあっていく必要があります。
心の病になってしまった私たちは、健常者の人たちよりも、否応なく「自分と向き合う」ことになります。しかし、それは心を豊かにするチャンスです。自分がどんなストレスに弱いかを知ってあげて、ちょっとズルしたり、ゆっくりしたり、近道したり、遠回りしたり…工夫をしながら「ストレス」「自分」「病」ともつきあって暮らしてみてください。心が元気を取り戻せるかもしれませんよ。