こころの元気+ 2014年3月号特集3より →「こころの元気+」とは
私たちの体験談 私たちが考える適正な処方とは?
症状より日常生活 (埼玉県)灯路さん
二度目のうつ病の診断から十年ほど経ち、現在のクリニックでのカウンセリングと薬で、快方へ向かっている私が思う適正な薬の処方。
それは「日常起きられなくても病気の症状がおさまる処方」ではなく、「日常生活を快適に過ごせて少しずつ気分が安定する処方」です。
うつ状態がひどいときに通っていた病院では、カウンセリングで話した病気の症状のみで大量の薬が処方されましたが、副作用で、のんだすぐ後に倒れて寝こむことがありました。
精神的な症状が楽になっても、身体はきつかったです。
限られた時間ではありますが、毎回の日常生活の状態と体調をよく聞いてくれて体質に合わせた処方をしてもらっている今、やっと適正な状態だと感じています。
夜に眠れて、朝に起きられることが条件 (静岡県)華月さん
夜眠れる、朝起きられる。
この2つが私にとって大きな投薬条件です。両方とも普通の人にはあたりまえなことですが、病をかかえる私には不可能になるときがあります。
私が最も困る副作用としては、便秘、口渇があります。
便秘薬は処方量がどんどん増えている感じがするし、また、災害時に最も困ると思われるのは喉が異常に渇く点で、私は1日に5~6リットルの水分を必要としています。
ただ、私の病気の場合、薬は必要不可欠で、空気のような存在です。
それに、自分の感覚でしかわからない点も多いです。なるべく主治医には、診察の際、自分の状態をよりうまく伝えなければと思っています。
自分で薬を調節できる処方 (栃木県)福田一夫さん
私にとってふさわしい薬の処方のあり方とは、治療の主体を、精神科医から自分の手にとり戻すことです。
あくまで病気を治すのは主治医ではなく患者本人です。
ですから、薬の処方に関しても、自ら調整できるような投薬とすべきなのです。
私の場合、朝と夜、袋に入ったのみきりの薬を出してもらっています。そして、頓服薬を若干多めにもらいます。袋に入った薬をのみ忘れた場合も頓服薬で対応します。
この処方のよい点は、必要最低限度の服薬ですむ点です。副作用も最小限度に抑えられます。
病気と薬に関しての正しい理解がなくては、なされない処方だとは思いますが、薬のセルフコントロールは新しい精神科治療への道だと確信しております。
血液や心臓の異常で (千葉県)髙見青磁さん
救急搬送され、その日から薬をのみ始め、後に統合失調症と宣告されました。
入院中に血液検査をしたのですが、突然、γ(ガンマ)GTP、中性脂肪、血糖などの値が高いと言われました。
なぜ突然であると感じたかというと、入院する2か月ほど前に会社の健康診断で血液検査をしていたのです。
毎日のように終電で帰っては、ウイスキーを浴びるように飲み、翌朝5時には起きて会社に行っていましたが、そのときは異常なしでした。
それと比べたら入院生活なんて健康そのものです。
入院中に心電図の検査もしたのですが、QT延長という、突然死の可能性もある異常が見つかりました。
また、10キロほど激太りしていました。
退院後、次第に症状も安定し、薬の影響について考えることも多くなりました。
2年ほど前になるでしょうか、主治医に「薬の影響で血液や心臓に異常が出ているのが不安だし、改善したい」と強く願い出ました。
こうして、慎重に別の薬に変えてみることにしました。
すると、体重はみるみるうちにもとに戻り、血液検査の結果もよくなり、心臓の異常も治まりました。
中性脂肪を下げる薬は今でものんでいますが、結果には満足しています。
のみ続けるのが怖い (愛知県)小沢亜季さん
私は統合失調症を発症した約10年前から3人の先生に診てもらいました。
最初の先生は、約1か月ごとにいろいろな向精神薬を処方しました。私も薬に無知だったのと、症状が重かったのでそのままのんでいました。
副作用が強く、「つらい」と訴えると違う薬…、というように複数の薬を試されました。
次の先生には、少し薬の相談をしましたが、症状がひどくなると薬がどんどん増量され、多いときで、1日に向精神薬・睡眠薬・副作用止めなど合計で15錠はのんでいました。
途中で勝手に薬をやめたこともありました。のみ続けることが怖かったからです。
先生に勝手にやめたのを怒られましたが、増量されるばかりで、症状が安定してきても「これをのんでいるから症状がいいんだよ…」と言われ、減薬にはなりませんでした。
現在の先生は、薬は少量にすると初めから言われました。
私が1日に服用する薬はロナセン1錠・ハルシオン2錠・タスモリン2錠の合計5錠で、2年続いています。
大きく体調を崩し薬が増えても、短期間ですので、とても気持ちが楽になりました。
先生は「完全に薬をやめられなくても、最少量でだいじょうぶ」と言ってくれます。
私は安心して薬をのめるようになりました。
悪性症候群に (青森県)小笠原和繁さん
私はアスペルガー症候群で26年間精神科に通い、今は病院のデイケアに通いながら週3回人工透析を受けています。
私は長年、主治医に「落ち着かないから」「眠れなくて」「人の目が怖い」などと訴え、薬を出してもらっていました。
その先生は、発達障がいなど、県内の児童精神科医のパイオニアのような名医なのですが、一方で、患者や病院関係者の間では多剤投与で有名な医者でした。
26年前、その先生が主治医になったときも、「お薬あげるからね」と言い、何の薬を処方するのかは言わないままでした。また、学生のとき、よくいじめられていたので、母がアドバイスを受けたいのに、してくれませんでした。
通い始めて7年後、朝、暴れて目覚めたことがあり、薬を変えましたが、多剤投与で、翌年、母と精神科に行って変えてもらった薬は、今思うと「依存性の強い薬だったのかな?」と感じるほど薬に溺れていました。
2008年8月、お墓参りに出かけ、クラッと倒れました。多剤処方と水の飲み過ぎで倒れたのですが、入院した内科クリニックで安定剤を完全に止められ、肺炎と高熱を出し、転院した総合病院で悪性症候群と診断され入院。
退院後、今の病院に転院し、薬も大幅に減らせました。
新しい主治医は前の先生の旦那でしたが、夫婦でも薬の処方や見立てが違い、アドバイスもくれるいい先生でした。
薬も「これとこれはいらない」といって打ちきり、体も心もラクに軽くなれました。
したいことがたくさんでき、デイケアも移ったら、母に「落ち着いてきたね」と言われ、生まれ変われた気がします。
私は、今の薬の処方に納得し、ほとんど変えずに4年間のみ続けています。主治医と相性も合うので、単剤投与に変えてよかったと思います。
1から勉強して (大阪府)上原博史さん
前のクリニックに通っていたとき、薬疹が出たことがあります。お腹や腕、背中に蕁麻疹(じんましん)のようなものが出て、とても気持ちが悪かったです。
そのときは何が原因かわからなかったので、パニックになりました。
「スティーブンス・ジョンソン症候群」ではないかと思い、すぐに病院へ行って、主治医に事情を話し、原因と思われる薬はストップしてもらいました。とても怖かったです。
以前は、1日12錠くらい服薬していました。内心では「減薬が必要かな?」と薄々感じていました。が、「いずれ薬で症状がなくなるのだろう」と安易に考えていたのも事実です。
しかし、薬はやはり対症療法に過ぎませんでした。
私は薬のことを独学で勉強しました。どうせなら1から勉強しようと考え、薬理学のテキストも読みました。とにかく本を読みあさりました。努力の甲斐があって、向精神薬のことはかなりくわしくなりました。
今では主治医にも、積極的に自分の考えを伝えています。
現在でも1日に7錠服薬していますが、自分なりに見つけた落としどころなので、納得しています。
患者が治療方法に関わるのは、本当にむずかしいと実感しています。