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第74回 コロナうつ
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著者:坪井貴嗣(杏林大学医学部 精神神経科学教室)
コロナうつとは?
「コロナうつ」とは、新型コロナウイルスの間接的な影響により、メンタルヘルスに影響が出た状態の総称で、もちろん正式な病名ではありません。
また新型コロナウイルスの直接的な影響である後遺症として、倦怠感や睡眠障害、食欲不振などが報告されていますが、これらは「コロナうつ」に含まれていないと私は考えています。
日本精神神経学会では、昨年新型コロナウイルスのメンタルヘルスへの影響の特徴を発表しています(表1)。
表1:新型コロナウイルスのメンタルヘルスへの影響の特徴
1 | 不安・恐怖・強迫的⾏動 感染にまつわる不安・恐怖 |
2 | イライラ・落ち着かなさ |
3 | 睡眠への影響 |
4 | 体調変化に対する過敏さ、健康不安 |
5 | 物質依存 |
6 | 健康観、価値観の変化 |
7 | 精神疾患の発症・増悪 |
これを見てもらえばわかると思いますが、うつ病だけでなく、不安症や睡眠障害、物質使用障害など、さまざまな病態が含まれています。
「コロナうつ」にはいずれもの病態があてはまる可能性がありますが、自分、あるいは家族など身近な人がコロナ禍と少しでも関係があってうつっぽいと感じている場合に「コロナうつ」と表現されると思われます。
問題点と対応方法
「コロナうつ」の問題点としては、必ずしもうつ病とは限らないため、たとえば抗うつ薬などを服用するだけではよくならない場合があります。
具体的な例としては、コロナ禍で自営業の経営が苦しく不安がつのっている場合の解決法は、抗うつ薬や抗不安薬ではなくて金銭的な問題を解決することではないでしょうか。
このように「コロナうつ」と感じた原因をきちんと特定することは重要で、自分だけではよくわからなければ精神科医に判断してもらいましょう。
そのうえで何らかの精神科病名がつく場合には、精神科医にしっかり治療を受けることをおすすめします。